ニューカレドニア
Activity Report from New Caledonia Vol.06 (2019 January - March)
from Thomas Auger (CIニューカレドニア)

プロジェクト進捗状況~一筋縄では行かない年明け…受けて立ちます!

プロジェクト進捗状況

2019年の年初は、予定していたフィールド活動とコミュニケーション関係の業務に専念しましたが、物事は必ずしも計画通りに進まず、マンタ・イニシアティブは保全活動の妨げとなる複数の問題に直面しました。

過去3か月の活動:
サイクロンと記録的に長く続いた強風がフィールドワークの妨げに

12月中旬以降、風は弱まることなく吹き続けており、海は白く泡立って沿岸の漁師や船員をやけっぱちな気分にさせる一方、カイトサーファーやウィンドサーファーを喜ばせています。この風はニューカレドニアの南東から吹き付ける強い貿易風です。
風が吹き始めて以降、風速19ノット(時速約35㎞)の東風または南東の風が60日間以上連続で記録されており、1951年にニューカレドニアで風速の観測が始まって以降、最長の連続記録となっています。
悪いことは続くもので、2月には強力なサイクロンOmaが二度も襲来し、大雨と強風をもたらしました。


言うまでもなく、海に行くのは危険なため、予定されていたフィールドワークはキャンセルとなりました。トゥオとヌメアで調査を行うことができたのは、30日間あった予定日のうち、わずか7日間だけでした。
それでもその7日間は実り多いものとなり、ヌメアでは3個体、トゥオでは2個体から遺伝子サンプルを採取しました。大変ありがたいことに、マンタ・イニシアティブのフォロワーが悪天候にも関わらずボランティアで投稿してくれた43枚の識別写真から、この新しく登録された5個体を識別できました!この結果、ニューカレドニア周辺で個体識別されたマンタは全部で316個体になりました。
マンタ・イニシアティブには引き続き皆さんの協力が必要です。もしマンタについてもっと知りたいとお思いでしたら、是非私たちのFacebookページに来てください。また、もしニューカレドニア周辺でダイビングをする機会があり、マンタの写真を撮影されるなら、是非投稿してください!

Initiative Manta en Nouvelle-Calédonie

私たちが新たに登録した5個体の個体識別用写真です。(写真はマンタのお腹の模様。其々が異なる。)


タグの回収作業

昨年11月、トゥオで3個体へのタギングを行った私たちは、タグに記録されたデータに大きな期待を寄せていましたが、こちらもそう簡単には行きませんでした。
3つのタグのうち2つは外れるのが早すぎました。6か月間装着してマンタの行動を記録するはずが、2週間以内に外れてしまっていたのです。
正確なデータを得るためには、タグを回収する必要があります。ここが難しいところで、遠い浜辺やマングローブが密生した場所、隔絶した岩礁などに打ち上げられる可能性があるのです。加えて、風の強い時期だったので、タグはトゥオの岸から150㎞も離れたニューカレドニア本島北部まで流されていました。2つのうち1つは北部のパム島の海岸に打ち上げられ、もう1つは同じく北部のアラマ先住民地区に近いマングローブ林に引っかかっていました。


タグを回収するために、私たちは打ち上げられたタグの方向と距離を示す角度計を使用しました。角度計を使う方法はタグのバッテリーに十分な残量があって初めて可能になるですが、悲しいことに正確な位置を特定できるだけの残量が残っているタグは1つしかありませんでした。
パム島に着いてからは、角度計と北部州の環境専門官の助けもあって、数分でタグを回収することができました。


想定外の出来事が続いた中ではさほど驚くべきことではありませんでしたが、前の週にタグを見つけ、既にヌメアの研究所へ送ったと話すパム島の地元の漁師達がいました。結局、彼らが見つけたのは、地域のサメのタギングプログラムのものだったとわかりました。パム島はタグを引き寄せる磁石のような場所です。
アラマのマングローブの奥深くに引っかかっていた2つ目のタグは、データの送信を止めていました。残念ながら、角度計はここでは役に立たず、アラマのマングローブのことなら何でも知っている地元のカニ漁師ドナルドさんの助けをもってしても見つけることができませんでした。


トゥオで装着された3番目のタグは12月中旬以降データを送信してきていません。このタグが今もまだマンタについていて、近々外れることを祈るばかりです。

トゥオでのタギングは再び失敗

3月に2回目となるトゥオでのフィールド調査を企画しました。強い流れと濁った水のせいで、海面はとてもわかりにくい状態でしたが、それでもなんとか2個体の遺伝子サンプルを採取してきました。ただ残念なことに、またしてもタギングの試みは失敗し、タグは装填直後に2つに割れて使えなくなってしまいました。

メキシコでのサメ、エイ、ギンザメに関する国際会議に参加

3月25日~29日にメキシコのプラヤ・デル・カルメンで開催された第1回Latin American Conference on Sharks, Rays and Chimaeras(サメ、エイ、ギンザメに関するラテンアメリカ会議)に、プロジェクト主担当のユーゴ・ラゾスが招待されました。1週間にわたる会議の間、ユーゴは100名以上の科学者の前で、ニューカレドニアのマンタに関する主要な研究成果を発表しました。中心となる話題は、世界記録となる深度600mを超えるマンタの潜行データです!これはマンタの研究が始まって以降、いまだかつて観察されたことのない深さでした。


世界中のマンタ研究の権威の方々と出会い、研究結果を共有できたことで、今回の会議参加はユーゴにとって非常に有益なものとなりました。


次の3か月間の活動

今後3か月間も引き続きヌメアとウベアでの追加のフィールドワークに注力していきます。ユーゴの博士号取得には、最低でも1つのサイトから20の遺伝子サンプルを採取する必要があるため、今後もマンタの追跡を続けます。
ニュージーランド・オークランド大学との遺伝子解析に関するパートナーシップは順調で、ユーゴは7月にオークランドに向けて出発します。

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