オオヅル家族の一員がBPLに戻ってきた
BPLに戻ってきた二羽のオオヅル
一般的に、カンボジアのオオヅルは2月にBoeung Prek Lapouv(BPL)保護区から他の採餌場へ移るか、直接繁殖地であるカンボジア北部に移動します。しかし、今年は2月に移動したはずのオオヅル家族の一員が7月初旬にBPLに数日間戻ってきてしまいました。その後、しばらく姿を見せなかったオオヅルが8月下旬にまたBPLに戻ってきました。これはとても珍しいことで、私たちの野外モニタリングチームは詳しく調べることにしました。前回のモニタリングの結果と比べ、オオヅルの個体群は急激に減少しており、生息地の消失が主な原因の一つであると考えられます。しかし、分かっていないことばかりです。
BirdLife Cambodia Programmeの活動
残念ながらこれまで一緒に活動してきたLyanが、7月末に都合により退職しました。後任の若手スタッフとして8月からMey Phannyが活動に加わりました。現在Phannyは基本的な研修が終了し、日々の活動を通して指導を受けています。また、バードライフのハゲワシプロジェクトのコーディネーターより指導を受けながら、9月の国際ハゲワシ啓発の日のイベントを成功させました。
パゴダの前に設置した普及啓発用の看板
■環境教育プログラム
環境教育プログラムの2年目が6月末に終了しました。先生達から各授業のフィードバックを回収しデータも入力しました。環境教育プログラム用の4枚のオオヅルポスター(生息地、生態、生活史、脅威)を印刷し、BPLの対象校に配布しました。違法な活動(土地の転換や密猟、毒薬の投与、違法な漁業)の防止を呼び掛ける看板も、SongKum Meancheyパゴダの前と村へ繋がる運河の中に1つずつ設置しました。
BPLの村で開催した上映会の様子
■教育ビデオを使ったオオヅル保全
生物多様性保全や適切な生態系サービスの利用について地域住民の協力を得るため、村で上映会を開催しています。9月末には、2つの村で村長と、若者や子供達76人を対象に開催しました。参加者は映像を楽しみ、上映後のクイズコーナーにも積極的に参加していました。また、村長から村人に対して、保護区に関する法律や条例についての説明が行われ、湿地資源の持続可能な利用を促しました。7月末に行われた自然資源関連の新しい条例に関する普及啓発用のワークショップでも、上映会を行いました。このワークショップには、生徒や地方自治体等300人が参加しました。
AP地域住民がAPの水田に農業有害廃棄物を捨てるためのゴミ箱を設置
■農業有害廃棄物管理
作業手順のもと予定していたAnlung Pring(AP)内の設置場所に、カラフルに色付けられた7つの廃棄用ゴミ箱を設置しました。また、農業有害廃棄物に関する問題と対策を地域住民に知ってもらうため、音声アナウンスを作成しました。9月初旬に、宗教セレモニーのためにパゴダに集まった人々に対して普及啓発をする際に使用しました。地域住民に適切な廃棄物処理の実施を促すための看板をデザインし、コミューン長の家の近くに設置しました。 環境省の閣僚会議令36及び、廃棄システムの安全性を考慮し、APの理事と協働してカンポントラッチ地区病院から廃棄システムを学びました。病院の理事は、今現在病院で行っている取り組みを紹介してくれると同時に、プロジェクトサイトでの実践を推奨してくれました。カンポントラッチ地区のごみ捨て場は、大型有害廃棄物処理システムの建設場所として適切な場所であることがわかりました。そのため、APの理事は、カンポントレッチ地区の知事に地区のゴミ捨て場に大型有害廃棄物処理システムの構築するための許可を申請し、2019年9月下旬によい返事が届いたところです。
大学生のためのスタディー・ツアー を開催
■普及啓発活動
都市部学生の育成: タケオ州の政府機関や他のNGOと共同で、プノンペンの大学生向けのスタディー・ツアーを2019年8月末にBPLで開催しました。このツアーには、80名の学生がカンボジア国立経営大学から参加した他、タケオ州の副知事からご挨拶頂きました。このツアーの目的は、湿地やオオヅル保全の重要性に関する大学生の知識を向上させることです。
この他、200本の木をHun Sen Kok Andeth高校に植えました。高校生たちは、水鳥を観察する機会を得たと同時に、保護区の管理、生態系サービスや保全活動における主な課題について学びました。
侵入種ミモザの駆除作業
侵入種の駆除: 侵入種のミモザ駆除活動を、2019年8月にBPLで実施しました。侵入種の駆除に関する理論的な事や野外実習を、大学生1名、6名のレンジャーと近隣の村人6人に対して行いました。この活動後、参加者達は侵入種の悪い影響や駆除作業について理解しました。また、大学生は地域住民、レンジャーやNGOのスタッフとの連携作業を体験しました。
環境教育プログラムに関しては、2年目の環境教育プログラムの報告書を完成させる予定です。また、小学校8校の先生を対象とした補習研修を行い、BPLの対象校2校向けの3年目の環境教育プランを立てる予定です。教育用ビデオの上映会をBPLとAPの6村で実施を予定しています。
農業有害廃棄物管理に関しては、音声アナウンスを使った普及啓発活動を、APの全ての対象村で行うと共に、地域住民に対し水稲栽培が終わる頃までゴミ箱を利用し監視するよう促します。大型の有害廃棄物処理システムをカンポントレッチ地区のゴミ捨て場に建設し、7つのゴミ箱から大型の廃棄物処理システムへ廃棄物を運搬するチームを編成する予定です。侵入種ミモザ駆除に関しては、多様なステークホルダーへの研修を実施する予定です。
Mlup Baitongの活動
エコスクール活動
(Koh Tromuong小学校での植林の様子)
きれいに整備された学校
オオヅルを守る劇の様子
■環境教育に使用する教材の新調
プロジェクト対象校が長期休暇中でも環境教育教材の維持に努めるよう促進しています。新年度を迎えるにあたって、研修を受けた教員たちに教材の内容を更新するように働きかけました。
■エコスクールの支援
有機農園、植林、学校備品の設置などエコスクールとして必要な活動を対象校でも行えるよう支援しました。結果として、プロジェクトに参加した学校の児童・生徒たちは統合的農業(例えば、Trapain Chhuk 中学校では漁業と作物栽培を同時に行っています)や生態系保全の知識を得ることが出来ました。 対象校の校庭は長期休暇中であっても、きれいに管理されていました。学校でのごみの分別など、ごみに関する授業が児童・生徒たちの行動にプラスの変化を与えられたからだと思います。他にも、バードライフ・カンボジアと協力関係のある学校ではオオヅルを保全するために劇を作りました。また、Koh Tromuong小学校の児童たちは植林を楽しんでいました。
今年度の活動のふりかえりと来年度の研修についての会議
■環境教育プログラムの実施
研修を受けた教員たちは小中学生を対象に環境に関するレッスン(1~4)を行っています。私たちは常にそのレッスン内容を更新し、来年度の環境教育がよりよいものとなるよう議論を続けてきました。
AP保護区でオオヅル保護について学ぶ児童たち
新学期(2019-2020)は11月からスタートとなりますが、今後は環境教育を行っていくにあたって教材の利用をさら促進し、対象学校でのエコスクール活動の導入をさらに進めていきます。また、研修を受けた教員たちが子供たちにより環境教育を行い、AP保護区へのスタディツアーを行うよう働きかけていきます。