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8月初旬、村は田植えの時期を迎えました。マラサリ村の水田では年に2回の田植えが行われており、1年を通じた農事暦のなかでもとても重要なイベントのひとつとなっています。
田植えの時期は村人総出で棚田に出向き、朝から日没近くまで田植え作業に没頭します。代掻きを終え一面が土色だった棚田が、徐々に若い緑色に染まっていく様は大変に美しい光景です。
エコツーリズム・プログラムを実施する村の若者たちは、かねてよりこの田植えをツアープログラムの一環として生かすためのアイデアを練っていました。 この度、首都圏の大学生16名からなる来場者を迎え、田植えや収穫後の稲の米搗きなど稲にまつわる村の伝統文化を題材とした文化体験パッケージが考案され、村の老若男女がガイドや講師となり環境教育ツアーとして実践することが叶いました。
Educational Package for Learning Traditional Culture in Malasari Village
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過去3か月の活動
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米搗きを体験する学生達
文化体験パッケージはマラサリ村が誇る稲作文化を中心に組み立てられています。これまでのレポートでもお伝えしてきたように、インドネシア全体で稲作の近代化が進む中、今でも伝統的な方法で稲作がなされていることがマラサリ村の誇りです。
村の若者たちは何度も打合せを繰り返し、マラサリ村の人々の暮らしを観光客に体験してもらうための方法についてアイデアを練っていきました。わずか2週間で終わってしまう田植えのシーズンに合わせ、村を訪れる訪問客をどのように案内し、どのような体験を提供するのが良いのかが話し合われます。
村のお年寄りに話を伺って文化体験パッケージで提供できるアクティビティの案を練り、シミュレーションを通じて実際のツアー時のタイムラインや行程の安全性の確認などを行い、マラサリ村の稲作を楽しく安全に体験してもらうとともに学習効果を高めるための工夫について試行錯誤を繰り返します。
懸命にエコツアーを盛り上げようとする若者たちの気概に応え、農家の皆さんも全面的に協力してくださり、田植え体験に利用される田の準備や、講師となっていただく住民の手配もスムーズに決まり、実際にツアー客を迎える準備が整いました。
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農家の方の指導で田植え体験
今回、環境教育ツアーに参加する事になったのはジャカルタ首都圏の大学に通う大学生16名。彼らは日本の損保ジャパン日本興亜環境財団が主催する「NGOラーニング・インターンシップ・プログラム」に参加するインドネシア人で、大学に通いながら環境NGOでインターンとして働いている学生達です。
普段はNGOの事務所で環境活動を学んでいる学生達ですが、地域住民主体の環境保全活動を学ぶための現場体験の一環として、マラサリ村のエコツーリズムに参加することになりました。
村に到着した学生たちは、村人の指導を受けながら田植えや米搗きを経験します。いずれの学生も人生初の体験だったようで驚きと喜びに満ちたイベントとなりました。
また、村人にとっても街からやってくる若い人たちが農作業を体験し、マラサリ村の文化に興味を持ってくれたことが何よりもうれしかった様子です。
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森の中でのテナガザルとの邂逅に興奮
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固有種の野鳥観察
翌日は自然体験パッケージとしてジャングルトレッキングを楽しみます。森の中ではテナガザルをはじめ数々の野鳥と出会うことができ、また、薬草などの有用植物についての学習機会にもなりこちらも充実したパッケージとなりました。
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学生と村の若者たちとのディスカッション
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学生からのアイデアに真剣に耳を傾ける
村の若者たち
今回のツアーでは住民と学生達との対話の時間を設け、今後マラサリ村のエコツーリズムをより良いツアーにするためのディスカッションも行われました。住民ガイドによるより良いインタープリテーション、村内でのゴミの処分方法、エコツアー・パッケージの宣伝方法など、学生から多くのアイデアが出されます。
観光客としての学生と観光客をもてなす住民とのディスカッションはとても有意義な時間となり、学生・住民双方にとってとても大きな学びとなりました。
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今後3か月の活動
• 11月にはボゴール県下の高校生20名を迎えた環境教育ツアーの実施を予定しています。今回の経験をもとに、より良いツアーの実施となることを大きく期待しています。
• 11月初旬より2週間の予定で、ユースプログラムの日本人インターン2名を迎えます。高校生を対象とした環境教育ツアーに同行頂き、実際のプロジェクト運営について学んでいただきます。